人はなぜ眠るのでしょうか。
突然そう聞かれでも困るでしょうが、気持ちのよい睡眠をとるために、睡眠のメカニズムを知っておくのは大事なことです。
人が眠るのは主として、日中に活動して疲れた脳機能や精神機能を、回復させるためだと考えられています。この睡眠がいかに大切なものであるかを知る上で参考になるのが、「断眠実験」の結果です。
これは、動物や人間に睡眠をとらせない(断眠)でいると、身体にどのような変化があるかを調べる実験です。たとえば、ラットを用いた実験では、断眠を始めてから最初の数日、食物の摂取量が増加するものの、その後エネルギーの消費量が増大し、体重減少が起こってきます。
そして、2~4週間後には全身衰弱や体温低下が起こり、ついには眠りを一切とらないことによって、ラットは死んでしまいます。
では、人間の場合はどうでしょうか?
人間を用いた断眠実験を行うと、2~3日後には覚醒状態を保つことが難しくなり、体や口を絶えず動かしつづけていなければ、起きていることができない状態になります。
さらに断眠を続けると、「微小睡眠」と呼ばれる、ごく短時間の居眠りをするようになります。
目を聞けたままで、ほんの数秒間という短い時間ですが、本人も気づかないうちに眠ってしまうのです。
また、それと同時に、「注意力の低下」「認知機能の低下」「誤認や錯覚」、さらには「焦燥感」などの精神機能の変化も起こるようになってきます。
つまり、長期にわたる断眠は、生物に大きなストレスを与え、健康に重大な障害をもたらすということです。人にとって睡眠はそれほど大切なものなのです。
ちなみに、ある程度進化した動物で、睡眠をまったく必要としない動物は存在しません。
生きて活動していく上で、脳は重要な役割を果たしていますが、その脳を休ませリフレッシュするために、睡眠は必要不可欠なものなのです。